導入事例紹介・トピックTopic

「目で見る」IoTで、
タイムロス削減と品質向上を実現

多品種小ロットというニーズに
応え続けるためのIoT

 繊維産業が集積するかほく市で50年余りにわたって細幅ゴム入り織物の材料として使用されるカバーリング糸を製造する浅野繊維工業。大手アパレルメーカーから指名を受けるほどの高い技術と多品種小ロット生産により順調に受注を伸ばしています。近年、さらなる業績アップを目指すため夜間も機械を稼働できないかと考えていましたが、人手不足や働き方改革による労働時間短縮などで社員を常駐させる訳にはいかず、生産性向上が課題となっていました。

課 題

  1. 準備工程を自動化し夜間に自動運転を実施したが、トラブルが起きると翌朝まで対応できず、設備の効果を十分に発揮できていなかった。
  2. 多品種小ロット生産品へのニーズが高まる一方で、人手に限りがあり注文を断らざるを得ないケースも発生していた。
  3. 社員の高齢化が進んでおり、技術の継承が急務。感覚や経験値によって判断してきた基準を数値化し、今後も品質が維持できる体制を整えなければならない。

効 果

  1. 準備とカバーリングの各工程のリアルタイム映像をスマートフォンやタブレットで監視するシステムを導入。軽微なトラブルであればオンライン上でリスタートできるシステムも導入しタイムロス削減を可能にした。
  2. カバーリング工程の作業内容を記録し、品質管理体制を強化。クライアントが安心して発注できる環境を整備した。

スタートは準備工程の全自動化

 天然ゴムやプリウレタン弾性繊維の外側に合成繊維や天然繊維を巻き付けて伸度や引きの強さを実現する複合加工糸。カバーリング糸とも呼ばれるこの糸は伸縮性に優れており、ファッション、車、医療、産業資材などさまざまな分野で使われています。浅野繊維工業は、カバーリング製造で半世紀もの歴史を持っており、さまざまな太さや色、素材の糸を複合し要望に応じたカバーリング糸を製造しています。

 大手ファッションブランドから指名を受けるほど高い技術と、多品種小ロットのオーダーにも短納期で応えるフットワークの良さから順調に受注を伸ばしている同社。生産性を上げさらなる業績アップを図りたいところですが、人手不足や社員の高齢化という繊維業界全体が抱える問題に加え、昨今の働き改革による労働時間の短縮で、時には注文を断らなければならない事態も起きていました。

 そこで、3代目に当たる浅野貴裕社長がまず取り組んだのは、カバーリングの前段階である原糸をボビンに巻きつける工程の自動化。可能になれば、夜間や休日も稼働できるため生産性の向上は確実。しかし、既存の機器や参考にできるような実例はありません。そんな時、知人から紹介されたのが(株)ヤマダの山田孝男社長でした。(株)ヤマダは、ワインダーをはじめ 繊維業で使用する準備機器を製造する企業。繊維業を熟知し、機器製造の技術とノウハウを持つことから多くの顧客を持つ企業にとってもボビン巻の工程を自動化するという依頼は初めてのことでした。しかし、「地元で頑張る若手を応援したい」と快諾。「平成28年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」を活用し、わずか4カ月で自動式ボビン巻機を完成させました。

最大の効果を生むためのIoT導入

 自動式ボビン巻機の導入で可能となった無人稼働のおかげで、夜間や休日も休みなく生産現場が動くようになり、迅速さが求められるサンプル提供への対応力も格段に上がりました。しかし、一度センサーエラーや糸トラブルなどが起きると朝まで機械が停止してしまうことも。そうなると、生産計画に影響が出てしまい、導入した設備の効果を最大限に活かしているとは言えない状況も生まれていました。そこで、浅野社長はIoTで生産状況の見える化を計画。自動式ボビン巻機だけでなくカバーリング機にもIoTを導入し機台稼働率を適正化したいと再び(株)ヤマダの山田社長に相談を持ちかけました。

 繊維産業は気温や湿度、原糸の素材によって細心の注意を要する繊細な仕事です。そこで(株)ヤマダが提案したのは、モニターに表示された数値を、カメラを通して目で確認するシステム。山田社長の「IoTはシンプルで分かりやすくあるべき」という考えを体現したものでした。

「目で見る」繊維業界の基本をIoTにも

 IoT化の基本となったのは、モニターや生産現場をいつでも確認できるようにする「監視」 と作業内容を記録する「管理」を行うという考え方。なかでも特徴的なのは、機台の稼働状況をデータではなくカメラを通し目視で確認する点。これは、豊富な経験を必要とする繊維産業ならではのIoT導入方法と言えます。

 全自動ボビン巻機とカバーリング機を映すカメラと、専用のアプリを入れたスマートフ ォンやタブレットの組み合わせで、いつでもどこからでもリアルタイムに生産状況の確認が可能に。さらにセンサーエラーなど軽微なトラブルの場合、駆け付け不要でリスタートできる仕組みを構築。機械の停止によって発生するロスタイムを5分の1に削減しました。 さらに、カバーリング機とパソコンを有線でつなぎ、作業内容をすべて記録。例え何年前の製品であっても、設計や品質に関わる問い合わせに正確かつ詳細に回答できる体制ができあがりました。

 今回の IoT 導入を成功に導いた最大のポイントは、数値管理にこだわらない柔軟な発想で経験豊富な人の「目」が届く範囲を広げたことにあります。機台の稼働率を上げることができたほか、技術管理者がクライアントからの問い合わせに生産現場の状況を確認しながらワンストップで対応できるようになったことも業務効率化に大きく貢献しています。

 カシミアなど繊細な糸を扱う際は気になって眠れない日もあったという浅野社長。しかし今は、「スマートフォンを開けば生産状況をすぐ確認できるので安心です」。今後は、カバ ーリング機から収集した稼働状況を基に夜間の無人生産に挑戦し、生産現場の負担軽減や 小ロット品の生産能力向上による受注拡大を目指しています。

企業DATA

浅野繊維工業株式会社
住所 石川県かほく市高松サ-49-3
電話番号 076-282-5652
代表者 代表取締役社長 浅野 貴裕
創業 1984年
資本金 1,000万円
従業員数 7名
事業内容 細幅ゴム入り織物製造業者向けカバーリングゴムの製造
HP https://asano-fibers.jp/

事業概要

費用 210万円(うち補助金90万円)
準備期間
導入設備 カメラ2台、ソフトウエア開発、Wi-Fi 環境強化
石川県 石川県工業試験場 ISICO ものづくり産業等IoT化推進研究会